切手の豆知識


第6回「コイル切手」

日本最初のコイル切手
日本 1933年
現在使われている50円切手(左)とそのコイル切手(右) 50円の印字式コイル切手


 切手は、何枚かがつながった形が一つの単位で、これをシートと呼ぶ。日本では、普通切手の場合、縦10枚と横10枚で、合計100枚がつながった形が、1シートである(例外として、700円切手は縦5枚と横10枚の50枚、1000円切手は縦5枚と横4枚の20枚が1シート)。記念切手の場合は、多くが縦または横が5枚あるいは4枚の20枚がつながった形で、1シートを構成する。郵便局の窓口では、利用者の求めに応じて、シート単位、またはシートを切り離して、希望枚数の切手を販売する。シートの縁には余白(耳紙=みみがみ)があり、切手を切り離しやすいように、切手と切手の間および切手と余白の間には、小さな穴がミシン目のようにあいている。これを、切手収集家は、目打(めうち)と呼ぶ。シートから切り離した1枚の切手の周囲は、つねにギザギザ状になる。
 切手は、郵便局の窓口以外でも販売されている。大きな郵便局の出入り口付近には、切手の自動販売機が設置されている場合がある。この自動販売機の切手は、両端がギザギザ状になっていない。これは、機械にセットしやすいように、切手が製造されているからである。自動販売機で販売される切手は、1000枚の切手が縦にロールのように巻かれた状態になっている。ロール状につながった切手を製造する過程で、切手の左右に目打をあけないので、両端にギザギザがないのである。切手収集家は、これを「コイル切手」と呼んでいる。
 日本で初めてコイル切手が登場したのは、1933(昭和8)年11月1日である。東京中央郵便局の局舎が新装となり、その竣工式会場に設置された切手の自動販売機(イギリス製)で、竣工式招待者に販売されている。一般の人には、同年11月3日から7日、逓信博物館(当時は東京の牛込にあった)で開催の「珍しい郵便切手の展覧会」会場に、切手の自動販売機が運ばれ、コイル切手が販売された。その後、機械は、東京中央郵便局の窓口ロビーに設置され、切手の展覧会があれば、その会場に運ばれた。しかし、一般にはあまり知られず、コイル切手の利用は少なかった。この切手が貼られた郵便物は、現在高値で取引されている。
 国産の切手の自動販売機は、1904(明治37)年に誕生しているが、実用には至らなかった。国産の機械が初めて実用化されるのは、1938(昭和13)年のことである。一般の人がコイル切手を多く利用するようになるのは、機械の設置台数が増えた、1980年代に入ってからである。1997(平成9)年には、料金が印字される新方式のコイル切手が登場した。

2005/05/28




切手の博物館
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