切手の豆知識 |
第9回「ホログラム切手」
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オーストリアによる世界最初のホログラム切手 1988年 |
アメリカ最初のホログラム切手 2000年 |
1960年代、外貨を獲得するために、ユニークなアイディアを考えた国が多数あった。経済力の弱いこれらの国々は、欧米の企画会社と手を組み、変わった趣向の切手を頻繁に発行したのである。型抜きシール式の切手、絹や鉄などの変わった素材へ印刷した切手、ステレオ立体印刷の切手などである。多くの切手収集家に購入してもらい、外貨を稼ぐ方法である。紙以外の素材で切手を作るという傾向は、1980年代に入るとあまり見られなくなった。製造コストがかかるわりには、切手の売上が伸びなかったことが、その原因と考えられる。趣味の多様化で、切手を集めて楽しむ人が、世界的に少なくなったからといえる。 しかし、1990年代になると、再びユニークな切手が数多く登場するようになった。現在では、経済力の弱い国・地域だけではなく、経済大国さえも、ユニークな切手の発行に熱心である。1960年代との違いは、購入者のターゲットの絞り方にある。1960年代は、切手を集めている人に買ってもらおうという狙いがあった。1990年代は、切手を集めている人ではなく、もっと広く、多くの人に買ってもらおうと、作戦を立てている。お土産品、記念品として購入してもらおうという視点で、ユニークな切手が企画され発行されているのである。 このような状況の中で特に増えているのが、「ホログラム」を利用した切手である。「ホログラム」の技術は、ハンガリー生まれで、イギリスの応用物理学者ガボール(Dennis Gabor 1900-79)が考案した。特殊なフィルムに、レーザー光線の入射角度を変えて凸凹をつけることで、眺める方向の違いによって、異なる図柄や文字が見える。彼は、この研究成果で、1971年にノーベル物理学賞を受賞した。1980年代後半から、「ホログラム」の実用性は、偽造防止素材として、クレジット・カードなどの分野で高まっていた。 1988年にオーストリアから発行された、輸出産業を奨励する切手に、切手では世界で初めて「ホログラム」が使われた。切手全体が「ホログラム」ではなく、図案の一部分に「ホログラム」が貼り付けられたものであった。切手の偽造防止というより、話題になり注目を集めたいという 意識が感じられる。オーストリアではこの1種だけであったが、カナダやオーストラリア、フィンランドでは2種類以上、ホログラム切手が発行されている。アメリカでも、2000年7月7日に初めて、地球や宇宙を描いたホログラム切手が発行された。現在までに、20以上の国・地域から、この「ホログラム」を用いた切手が発行されている。残念ながら、日本からはまだ発行されていない。 2005/05/28 |
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