切手の豆知識


第11回「タブ」

 

イスラエルの「タブ」付き切手
郵政10周年記念 1959年
日本の「タブ」付き切手
競馬法公布25周年記念 1948年


 切手収集の世界には、様々な専門用語がある。そのひとつが「タブ」である。切手の隣に、同様の形態でつながっているアイテムのことをいう。切手を切り離すミシン目(目打)が付いていて、隣の切手に関連する絵柄が印刷されている。そこに、国・地域名の表示や、料金(額面)の表示がないので、切手ではないことになる。隣の切手に関連した「ラベル」とでもいえよう。
 切手は、縦何列、横何段かの組合せで、「シート」と呼ばれる大きな固まりで作られる。そのとき、お金の計算がしやすいように、「シート」の端の何枚かに、切手をわざと印刷しないように製造することがあった(19世紀初めの頃)。切手を印刷せずに、白紙のままであると、この部分には切手と同様の大きさで、ミシン目も付いているので、切手の偽物を作る人間がいるのではないかと、考えられた。そこで、偽造防止の観点から、この部分には、多くの場合「×」マークが印刷されていた。もともと「タブ」は、このような背景から生まれたのである。
 20世紀に入ると、この「タブ」の部分に、工夫を凝らす国・地域がでてきた。偽造防止のために、何かのマークを印刷する必要があるのなら、「×」マークではなく、もっと役に立つものをと、考えられたのである。それは、この部分に標語や広告を印刷することであった。イタリア、デンマーク、ドイツ、フランス、ベルギーなどでは、この「タブ」が有効に利用されていた。
 しかし今日では、広告が印刷された「タブ」は、ほとんど無い。記念切手を発行するときに、あらかじめ、その記念切手に関連するイラスト等を印刷した「タブ」を付けたものが多い。この形態を盛んに利用している国はイスラエルで、発行されるほとんどすべての切手に、「タブ」が付いている。今日、写真付き切手(Pスタンプ)が、日本をはじめ、世界の多くの国、地域で発売されている。この切手の写真の部分は、切手ではなく「タブ」なのである。
  「タブ」とは、英語の「Tab」のことであり、垂れ飾りやインデックス・ラベルを意味する。したがって、切手の付け足しラベルという感覚で、名付けられたのではないかと思われる。  

2005/05/28




切手の博物館
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