切手の豆知識


第13回「初日カバー」

 
 
1962年の国際文通週間記念切手の初日実逓カバー
外国宛てなので、脇に欧文日付印が押されている
1993年の皇太子殿下御成婚記念切手の初日カバー


 新しい切手が発行されたとき、その切手を封筒に貼り、発行当日の日付印(消印)を押してもらったものを、切手収集の世界では「初日カバー」と呼んでいる。英語では、「First Day Cover」(ファースト・デイ・カバー)といい、「FDC」(エフ・ディー・シー)とも略称される。
 新しく発行された切手を、宛名を書いた封筒に貼り、その新切手発行当日に郵便局に差し出せば、発行当日の消印が押されて配達される。これは、実際に郵便物として送られたので、初日カバーの中でも「初日実逓カバー」と称される。しかし日本の場合、これは初日カバーの一般的な形ではない。「初日カバー」と呼ばれる一般的なものは、「初日実逓カバー」とは別のものである。
 消印は、差し出された郵便物の切手以外にも、押してもらえる。日本では、郵便局にお願いすれば、はがき料金分の切手に対して(現在は50円以上 )1種類の消印を、当日の日付で、記念に押印してもらえるのである。このシステムを利用して、一般的な初日カバーは作られている。したがって、宛名の書かれていない封筒に新切手が貼られ、そこに新切手発行当日の消印が押されることになる(イギリスの郵便局も、記念に消印を押すサービスを行なっているが、宛名が書かれたものに切手が貼られていないと、押印しない)。この場合、切手は郵便を利用するために使うのではない。記念品としての収集品作りが目的である。普通の人にとっては、大変にもったいないと思われるであろうが……。
 初日カバーは、記念品としての要素が高いので、その封筒には、多くの場合、新切手にちなんだ奇麗な絵が描かれているか、印刷されている。この絵を「Cachet」(カシェ)と呼ぶ。1920年代後半からアメリカで流行し、世界に広まって行った。また今日では、消印も普通の日付印のタイプだけではなく、新切手にちなんだイラスト入りで、新切手発行を意味する文字も入った、特別な消印を用意する国・地域がほとんどとなった。
 新切手発行日、新切手にその当日の消印を押した初日カバーは、「切手の誕生日を記録した記念品である」と語る、切手収集家がいるが、まさにその通りである。

2005/05/28




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