切手の豆知識


第15回「ポスト」

切手趣味週間にちなむ郵便切手
日本 2001年
赤いポスト
イギリス 1983年
青いポスト
アメリカ 1973年


 4月20日は、日本で近代郵便制度が始まった日である。1871(明治4)年3月1日(当時は旧暦)のことであった。切手も同時に発行された。今日、この日は「郵政記念日」として、毎年「切手趣味週間にちなむ郵便切手」が発行されている。2001(平成13)年は、赤い丸型ポスト誕生100周年を記念し、1908(明治41)年当時のポストを描いた、中村洗石画「郵便物投函の図」(逓信総合博物館所蔵)が、切手に取り上げられた。この絵には、赤い丸型ポストに手紙を入れる子どもが描かれている。
 日本のポストは、近代郵便制度が始まったときから、赤かったわけではない。日本最初のポストは、書状集メ箱という、白木造りの箱であった。これを、小さな屋根(ひさし)の付いた、一本足の台の上に置いていたのである。東京では、郵便役所の前(現在の日本橋郵便局付近)、虎ノ門、両国橋、昌平橋(現在の神田郵便局付近)、浅草雷門、神楽坂下、赤坂見附、京橋、芝神明前(現在の港区役所付近)、芝増上寺下の赤羽橋、四谷、永代橋の12ヵ所に設置されていた。1872(明治5)年2月には、新しいタイプのポストが登場する。高さがおよそ1メートルちょっと、約24センチ四方の柱状のものである。杉材を黒っぽく塗り、正面には白文字で、郵便箱と書かれていた。日本の近代郵便を生みだし、郵便の父と呼ばれる前島密(まえじまひそか)は、このポストについて、その著書『郵便創業談』の中で面白いエピソードを記している。街の人が郵便箱を垂便箱と読み違え、差し入れ口が高いところにあるので、外国人用のトイレだと思った、という話である。それはともかくとして、このポストは、街でとても目立つ存在であった。
 「郵便箱」が「郵便POST」と表示されるのは、榎本武揚が逓信大臣(当時の郵便行政を扱う役所)であった、1887(明治20)年のことである。この年には、郵便マークとして、「〒」も定められた。
 赤い丸型ポストは、1901(明治34)年10月、試験的に登場した。下関の民間人であった、俵谷高七という人の試作品ということがわかっている。ポストが赤いのは、遠くからでも目立つからと言う人がいるが、実際のところ、なぜ「赤い色」なのかは、詳しい記録が見つからず、わかっていない。1908(明治41)年10月に、ポストは「赤い色」と決まったという、正式な記録は残っている。ちなみに、ポストの正式名称は「郵便差出箱」である。なお、イギリスのポストは赤色、アメリカは青色、フランスは黄色、中国は緑色である。

2005/05/28




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