切手の豆知識


第19回「消印」

日本最初の「消印」
(タテ約7.4p×ヨコ約2p)
明治後期から昭和後期の「消印」
(手押しタイプの標準型)
現在の「消印」
(手押しタイプの標準型)


 最近は、切手が貼られていない郵便物が多くなっているとはいえ、まだまだ切手が貼られた郵便物は、数多く存在する。切手が貼られた郵便物を見ると、切手の上にかかるように、郵便局の名前と日付が示されたスタンプが押されている。このスタンプのことを、「消印(けしいん)」と呼ぶ。
 1840(天保11)年、イギリスで世界最初の切手が誕生し、郵便料金をすでに支払った証として、郵便物に貼られるようになった。この切手の再使用(利用)を防ぐ方法として、郵便物に貼られた切手に「消印」が押されるのである。当時の消印は、郵便局の名前も日付も表示されていない、十字架模様のものであった。ただし、切手が使われるようになる以前から、郵便物そのものには、郵便物を引受けた郵便局で日付を示すスタンプが押されていた。切手が誕生し、郵便物に貼られることで、切手の再利用を防ぐ「消印」と、従来から行われていた日付を示す「消印」とが、郵便物に押されるようになったのである。つまり、「消印」には、郵便局名・日付を明らかに証示するもの(証示印)、切手が再び使われないように抹消するもの(抹消印)、以上の2つの要素があるといえる。
 日本では、近代郵便制度が始まった1871(明治4)年、日本最初の切手の登場とともに、「消印」が初めて用いられた。「検査済」と大きく表示されただけの「抹消印」である。ところが、この表示だけでは不便であったようで、すぐに地名表示が加わった形態に切り替わった。「検査済」と大きく表示されただけの「抹消印」が押された当時の郵便物は、今日ではとても珍しく、何通も存在しない。もし、市場に登場すれば、500万円以上の値段で取引されるのではと思われる。
 明治時代の郵便草創期において、「消印」は、それぞれの郵便取扱所(郵便局)で、様々なデザインや表示の「証示印」・「抹消印」が用いられていた。しかし、1873(明治6)年以降、これらの「証示印」・「抹消印」のスタイルが統一されて行き、1888(明治21)年になると、「証示印」が「抹消印」を兼ねた、今日の手押しタイプの「消印」の形態が整ったといえる。また、外国宛ての郵便物には、日本の外国宛て郵便制度が整った1875(明治8)年当初から、欧文表示の「消印」が用いられている(現在の形式とはタイプが異なる)。
 「消印」の種類は、時代や郵便の用途、郵便局の種類ごと、機械によるものなど、とても多くのタイプが存在している。

2005/05/28




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