切手の豆知識 |
第22回「凹版切手」
版面に画線を彫る 切手の日記念 フランス 1966年 |
ビュラン 凹版切手印刷50年記念 デンマーク 1983年 |
スラニアが手掛けた1000枚目の切手記念 スウェーデン 2000年 |
今日では、世界中のどこかの国・地域で毎日新しい切手が発行されている、といっても過言ではない。最近では、年間、およそ1万2000種類もの新切手が発行されているのである。 切手は国・地域の証券にあたる。偽造されると、その国・地域は損を被る。したがって、偽造防止の面から、切手の製造には印刷技術の結晶が注ぎ込まれてきた。特に、凹版印刷の技術が活用されたのである。さらに、凹版印刷による美しい切手が数多く登場し、多くの切手収集家が魅せられ、切手は「印刷物の芸術品」と認識されるに至ったのである。 1840年にイギリスで誕生した世界最初の切手は、凹版印刷という手法で作られた。凹版印刷は、ヨーロッパで15世紀頃に発明された。騎士たちの鎧や兜に、飾り模様を彫り込むことが流行し、金細工師たちが彫り込むデザインの見本を示すために、凹版印刷という手法が生まれたと言われる。鉄や銅の版面を傷つけて、細かい画線を表現できることから、やがて宗教画や本の挿し絵などの絵画の印刷に用いられるようになる。17世紀頃は、日本では、デフォルメされたデザインの、凸版(木版)印刷による浮世絵が広く普及した。一方、ヨーロッパでは、緻密な風景を描き出すシャープな銅版(凹版)印刷の風俗画が普及していたのである。この凹版印刷の技術の進歩が、世界最初の切手の製造につながるのであった。 凹版印刷の原理を簡単に説明する。まず、表面が平らな銅などの金属の板(版面)に、ビュランと呼ばれる専用の彫刻刀で画線を彫る。そして、版面全体にインキを塗り、表面部分のインキを拭き取ると、ビュランで彫った溝の部分(画線)にだけインキが残る。ここに印刷用紙を乗せて、上部より強い圧力を掛けると、印刷用紙にインクが食い込み、印刷が完了するという仕組みである。薬品を使って、版面を腐食させる手法もある。 凹版で切手を製造するには、切手自体が小さな面積のものであるから、彫る人間の熟練した技量が必要とされる。また、手間や製造コストも高くつくことから、今日、世界的に凹版切手の発行が減少している。そのような中にあって、北欧のスウェーデンは、味わい深い凹版切手を数多く発行し続けている。特に、スラニア(1921−2005)が彫刻師として名高い。彼はスウェーデン以外の国・地域の切手も多く手掛け、その凹版切手の美しさは、世界の切手収集家を魅了している。 2005/05/28 |
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