切手の豆知識


第28回「記念切手」

世界最初の記念切手
ペルー 1871年
記念の意味を示す文字が入った
世界最初の記念切手
ニューサウスウェールズ 1888年
日本最初の記念切手
日本 1894年


 切手が1840年に誕生してから1870年までの間、切手は純粋に、郵便料金を前払いしたことを示す、単なる証紙であった。しかし、19世紀後半以降、為政者は、訴えたいことや思想を内外に示す手段としても、切手を利用するようになった。
 切手収集の世界で、世界最初の記念切手と言えば、多くの場合、南アメリカのペルーが1871年4月に発行した切手を指す。南アメリカ最初の鉄道である、リマとカヤオ間の路線開通20周年とチョリヨスまで路線が伸びたことにちなんだ記念切手で、蒸気機関車とリマの紋章が描かれている。この切手には、チョリヨスとリマとカヤオの名称が表記されているが、開通20周年記念を示す表記はない。しかし、切手でこの事柄を広く周知し、祝っていることは明らかであろう。当時、鉄道は国力を示すステータスであった。、国力の誇示に記念切手の発行は一役買っているのである。
 1914年にアメリカで刊行された世界の記念切手を解説した書籍、「The Commemorative Stamps of the World」には、上記のペルーの切手は掲載されていない。この書籍で、切手の中に発行の意味を示す文字が入り、記念すべきことを明らかに周知宣伝する目的で発行された最初の切手を探したところ、オーストラリアのイギリス植民地ニューサウスウェールズが1888年に発行した切手であった。切手の中に「ONE HUNDRED YEARS」との表示があり、入植100年を記念して発行されたことがわかる。
 日本最初の記念切手は、明治天皇の結婚25年、すなわち銀婚を祝う切手であった。1894(明治27)年3月9日に発行された。前述の世界の記念切手の書籍で、主な国の記念切手発行状況を見ると、アメリカは1893年、アルゼンチンは1892年、イタリアは1910年、オーストリアは1908年、オランダは1913年、カナダは1897年、ギリシャは1896年、スイスは1900年、スペインは1905年、ブラジルは1900年、ベルギーは1894年なので、日本の記念切手発行は、世界的にも早い部類である。通称「明治銀婚」と呼ばれる日本最初の記念切手は、当時の逓信省年報に「特別郵便切手」と記されていて、普通切手ではないことがわかる。さらに、当時の新聞記事(東京日日新聞 明治27年3月24日付)には、「紀念郵便切手」と書かれている。なお、この時代、「記念」の「記」は「言べん」ではなく、世間一般に「糸へん」の「紀」が使われていた。日本の記念切手の表記が、「紀念」から「記念」に変わるのは、大正から昭和にかけて文部省(現文部科学省)で「記念」の語を使うことが多くなり、世間一般にも広まった1928(昭和3)年以降である。

2005/05/28



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