切手の豆知識 |
第32回「マキシマムカード」
1982年のオーストリアの例 | 1999年のフランスの例 |
マキシマムカード(Maximum Cards)のマキシマムとは、「最高の」を意味する。何が最高のカードなのかというと、「絵葉書の絵や写真の面に、それと同じデザインの切手が貼られ、その絵や写真に関連する場所の消印が押され、そして消印の日付はその切手が発行された日」、これらが揃っているカードである。19世紀後半から20世紀前半、海外旅行が身近ではなかった時代、一般の人々は絵葉書を通して、外国の風俗や風景についての知識を得ていた。その絵葉書には、イラスト、モノクロ写真、写真に色付けをしたものなど様々な種類があり、お土産品としても好まれていた。当時、外国を旅行する者や仕事のために外国へ出かけた者は、現地で絵葉書を購入し、家族や知人へ郵便物として差し出した。多くは、絵や写真の面に当地の切手を貼った。そして、その切手には、当地の消印が押される。絵や写真、切手、消印が一体となった、思い出の品という概念である。 例えば、こういうことである。日本へ旅行に来たイギリス人が、日光を観光し、東照宮陽明門に感動した。さっそく、陽明門の写真の絵葉書を買い、日光郵便局で送料分の切手を買い、写真の面に切手を貼る。イギリスにいる家族への宛て名を書いて、日光郵便局の窓口かポストに差し出す。そうすると、切手には日光局の消印が押されて、イギリスに届く。送料分の切手の図案が陽明門であったら、絵葉書、切手、消印がリンクすることになる。実際にこの時代、エジプトのピラミッドを旅したヨーロッパ人の多くが、ピラミッドの絵葉書にピラミッドの切手を貼って、ピラミッドのある町の郵便局のから差し出していたそうである。「マキシマムカード」の登場までには、以上のような背景があった。 いつ頃、マキシマムカードという言葉が生まれたのかわからないが、1930年代のヨーロッパでは、絵葉書、切手、消印がリンクした、これらを集める収集家が増えてきた。新切手の発行に合わせて、独自の絵葉書を作って、新切手発行初日の消印を押したものを製作販売する、民間の業者も登場した。日本でも、同時期、ヨーロッパにならい、同様のものが多数作製販売されている。それまで、偶然ではなかなかできなかったアイテムが、業者の手で切手収集家にとって身近なものとなった。 1960年代以降、ヨーロッパ各国の郵政当局は、新しい切手の発行に合わせて、切手の図案と同じか関連するデザインの絵葉書を作製し、そこに新切手を貼って、発行初日の記念の消印を押すという、マキシマムカードのサービスに力を入れはじめた。新切手の販売促進の新手法といえる。これは「初日カバー」に似ている。 2005/05/28 |
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