切手の豆知識


第34回「紙製ではない切手」


アルミニウムの切手
ハンガリー 1955年
鉄板の切手(磁石につく様子)
ブータン 1969年
銀の切手
オランダ 2001年


 ほとんどの切手は、紙に印刷されて作られる。これは、切手が均一な品質の大量生産品であり、需要の関係からも、大量に材料が必要で、迅速な生産が求められているため、紙に印刷することが、最も適していたのだといえる。切手が誕生した1840年から今日に至るまで、特別な理由や意図がない限り、切手は紙に印刷されている。
 最初の「紙製ではない切手」には、諸説がある。1852年、インドのシンド地方で切手が必要になり、丸い赤い封ロウにエンボスして、これを切手として使用した例。通常の紙が用意できず、竹の繊維で作った素材に印刷した、北ベトナムが1946年に発行した切手。1955年にアルミニウム産業を記念してハンガリーが発行した、アルミホイルに印刷した切手。これらである。しかし、紙製ではない切手のほとんど全ては、郵便に使用するためというより、記念品としての要素が高い。1958年に、ハンガリーは国際郵趣会議の記念切手を発行した。この時、8種類の紙製の切手以外に、4種類の切手を組み合わせた記念切手シート(切手収集家は「小型シート」と呼ぶ)を発行している。この記念切手シートは、布に印刷された。同じ1958年に、ポーランドでは、ポーランドの郵便400年を記念した切手展の記念切手1種を紙製で発行し、他にこの1種を絹に印刷した記念切手シートも発行した。
 1960年代後半、発展途上の国々の中に、欧米の企画会社と手を組んで、紙製ではない切手を製造・発行して、外貨を稼ぐ国が見られるようになった。特にヒマラヤの王国ブータンは、絹やプラスチック、薄い鉄板などに印刷した切手を多数発行している。見る角度で絵柄が変わる、ステレオ印刷の切手もある。1973年には、ソノシートの形状の切手(「レコード切手」と呼ばれ、実際に国歌・民族音楽を聴くことができる)を発行した。
 2000年頃になると、頻繁ではないが、先進国からも紙製ではない切手が発行されるようになった。スイスは、刺繍でできた切手を2000年に発行した。2001年には、イタリアが絹に印刷した切手、オランダが銀製の切手を発行している。切手が郵便に使用する目的ではなく、お土産品、記念品と化しているのである。紙以外の素材でできた切手は、たまに発行されるのであれば、発行されるたびに話題となり、多くの人が購入する。実際に、郵政当局の売れ筋商品になっている。布、絹、化学繊維、ビロード、アルミホイル、プラスチック、鉄板、金箔、銀製、木の皮などの切手が、今までに存在する。英語では、四角形ではない切手、シール式の切手などとともに、これらの紙製ではない切手のことを、「UNUSUAL STAMPS(普通ではない切手)」と呼んでいる。

2005/05/28



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