切手の豆知識


第17回「国名表記」

イギリス切手の国名表記は、
女王のシルエット

1998年
サウジアラビア切手の国名表記は、
国の紋章のシルエット

1995年


 切手の印面(図柄などが印刷されている部分)を見ると、そこには必ず、その切手が「いくら」として使えるかを示す、「額面」が表記されている。また、「額面」や絵柄以外に、その切手を発行した国・地域の名前が示され、その切手を発行した国・地域以外では使用できないことになっている。切手に示された国・地域名により、これはどこの国・地域の切手なのかを、判断することができる。すなわち、この切手が、どこの国・地域で使用できるのかを、利用者に伝えているのである。
 1840年にイギリスが、世界で初めて発行した切手には、あたりまえであるが「額面」が表記されている。しかし、「国名」の表記はなかった。ヴィクトリア女王の横顔が描かれた切手であったので、誰が見てもイギリスの切手であると思ったであろう。また、他に切手を発行している国がなかったので、国名を表記する必要がなかったともいえる。切手を発行する国・地域が増えてきても、国王や国の紋章が切手の図柄であれば、国・地域名をわざわざ表記する必要はなかったかもしれない。しかし、世界中に郵便が届くようになるとともに、文字による国・地域名の表記が必要になったと考えられる。
 自国の切手では外国へ郵便を出せない国・地域は、その切手に国・地域名を表記する必要はなかったであろう。日本も最初の切手発行から5年間は、自国の切手で外国へ郵便を出せなかった。この間の日本切手には、国名の表記がない。イギリスは今日でも、エリザベス女王の横顔やシルエットを切手の印面に示し、国名を文字で表記していない。また、サウジアラビアも、国の紋章のシルエットを切手の印面に表記し、サウジアラビアの切手であることを示している。
 世界の郵便のルールを統括する国際組織、万国郵便連合(UPU)では、1964年の会議で「1966年以降、切手にはローマ字で国・地域名を表記する」ことを採択した。それに従い、日本は1966(昭和41)年から、切手には日本語表記の他に「NIPPON」というローマ字を表記している。しかし、従っていない国・地域も、多く存在している。

2005/05/28




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