切手の豆知識


第24回「ストックブック」

Pocket Collecting−book ストックブックに切手を並べた例


 切手を集めていない人でも、切手をしまうものとして、「ストックブック(Stockbook)」知っている人は多い。日本では「ストックブック」が、集めた切手を整理し、保存しておくものとして定着している。
 欧米では、どうであろうか。イギリスで世界最初の切手が1840年に登場し、その10年後には、すでに広く切手を集める趣味の人がいたといわれる。多くの場合、スクラップブックのように、ノートに直接、集めた切手を貼り込んでいた。時代が進むと、この方法は不便なことが分かった。切手を、発行年代順に整理し直すことが困難である。重複した切手を、仲間と交換するのが面倒である。そこで、ノートに切手を直接貼りつけるのではなく、切手が簡単に移動できるように、切手とノートをつなぐ、糊付きのちょうつがいのような小さい紙片(「ヒンジ」と呼ぶ)が開発され、大変に普及したのである。現在は、切手を傷めずに挟んで貼れる「マウント」というものも登場した。
 ノートは、加除式のものに発展している。これが「切手アルバム」で、欧米の切手収集家の多くが、この「切手アルバム」にコレクションを保存している。欧米には、大きな切手収集用品メーカーが数社ある。これらのメーカーの用品販売カタログを見ると、ページの多くが「切手アルバム」の各種タイプの案内と宣伝に、費やされている。「ストックブック」も、多くの収集家に愛用されているが、その販売カタログに、案内と宣伝のページは少ない。
 それでは、「ストックブック」とは、いったい何なのであるか。ドイツの著名な切手収集研究家A・ブンゲルツによる、ドイツ語の切手収集用語辞典(1923年)には、「Einsteckbucher」と載っている。英語で「Stock Albums」という、重複品を保管するためのもの、という意味が記されている。イギリスの著名な切手収集研究家J・メルビルが、1924年に著わした切手収集指導書には、「Pocket Collecting-book」というものが、図入りで紹介されている。これらは、「ストックブック」の原形と思われる。切手を差し込むポケットが付いたノートで、他の収集家との交換用切手をしまっておく、持ち運びに便利なもの、といえるであろう。
 日本では、「切手アルバム」と「ストックブック」とが、混同される場合が多い。「切手アルバム」とは、調べて分かったことを、切手と一緒に書き込める保存タイプのもの。「ストックブック」とは、切手を何かに使うために、一時的に保管しておくものと、位置付けることができる。

2005/05/28



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