切手の豆知識


第25回「風景印・小型印」

風景印が押された郵便物 小型印が押された郵便物


 日本の消印の中には、イラストが描かれた消印が存在する。「風景印」、「小型印」と呼ばれる消印が、その代表的なものである。郵便物を差し出すとき、差し出す人の申し出によって、思い出に残るように、記念になるようにと、押される消印である。郵便局では、これらの消印があることを、積極的に周知宣伝していない場合が多いので、あまり目にする機会がない。しかし、切手収集家や手紙が好きな人の中には、このイラスト入りの消印を押してもらい、大いに楽しんでいる人がいる。
 世界の事例は分からないが、日本では、1902(明治35)年6月20日に、イラスト入りの消印が初めて登場した。万国郵便連合(UPU)加盟25年を記念したもので、祝典式場の臨時郵便局と24ヵ所の主要な郵便局で使用された。それ以後今日まで、記念切手の発行や国家的行事に際しては、ふさわしい絵柄のイラスト入りの消印が用意されて、使用郵便局と使用期間が指定された上で使われている。この消印は、「特殊通信日付印」という名称で、「特印」と略称されている。
 また、シリーズ切手の発行初日にあわせて、その切手と関連した図柄のイラスト入り消印が、指定された郵便局で使われる。1974(昭和49)年に登場のこの消印は、「絵入りハト印」と呼ばれている。現在、およそ10,000の郵便局で恒久的に使用されている、イラスト入りの消印は「風景印」である。直径36oの円形が原則で、消印の色は赤味がかった朱色である。「風景スタンプ」とも呼ばれるが、正式には「風景入通信日付印」という。各郵便局の近隣にある名勝地や、特産品が描かれた消印である。静岡県の富士山局、山梨県の富士山北局の2つの郵便局で、1931(昭和6)年7月10日から、初めて「風景印」が使用された。最近では円形以外の変わった形の風景印も多く見られる。「風景印」に関しては、これらをまとめた書籍が数種類出版されている。また、インターネットにも関連サイトが多い。
 「小型印」は申請のもと、イベントに際して使われるイラスト入りの消印である。1934(昭和9)年に初めて登場した。「小型記念通信日付印」が正式名称で、使用期間と使用する郵便局が限定されている。「特印」、「絵入りハト印」、「風景印」のサイズは直径36oであるが、「小型印」は直径32o(中には変型もある)と小さい。消印の色は風景印と同様に赤味がかった朱色である。
 イラスト入りの消印のうち、「風景印」以外は、使用される期間や使用する郵便局が限定されているので、常に郵便局の窓口で押印を依頼できるわけではない。

2005/05/28

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