切手と遊ぶ発見ミュージアム

切手旅第17回「北海道の流氷」

新年あけましておめでとうございます。
今年も皆様と一緒に、切手の舞台を旅していきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

さて2022年最初の切手旅第17回は、北海道の冬の使者「流氷」を舞台に、Wキャストで2種のふるさと切手をご紹介します。
一枚目は2004(平成16)年発行のふるさと切手・北海道「流氷とガリンコ号Ⅱとオオワシ」、二枚目は1993(平成5)年発行のふるさと切手・北海道「ゴマフアザラシ」です。

ふるさと切手・北海道「流氷とガリンコ号Ⅱとオオワシ」
2004年発行

ふるさと切手・北海道「ゴマフアザラシ」
1993年発行

流氷ってどこで見られるの?


厳冬期の1~2月になると、流氷のニュースを耳にしたことはありませんか? 「流氷初日」とか「流氷接岸初日」といった独特の用語を聞くと、氷の海の風景がなんとなくイメージできるのではないでしょうか。

流氷とは海面を漂流する氷の塊のこと。中国とロシアの国境を流れる極東最大の河川アムール川の淡水がオホーツク海に流れ出て氷結し、徐々に大きくなりながら季節風や海流によって南下し、紋別・網走・知床など北海道北東部のオホーツク海沿岸に漂着するのです。実は流氷が見られる海としては、オホーツク海は南限なのだそう。東京から見ると道北や道東は極寒の地のように思えますが、流氷はもっとずっと寒い場所からの使者なんですね。

寒いと分かっていても「流氷」を一度は見てみたいという方、
多いのではないでしょうか(写真提供:(一社)網走市観光協会)

流氷を沿岸から最初に肉眼で確認した日が「流氷初日」となり、1月中旬から下旬のちょうど今ごろ。その後どんどん陸に近づいてきて、最初に接岸した日が「流氷接岸初日」となり2月上旬から中旬あたり。そこから3月上旬ごろが、流氷を見ることができる確率の最も高いベストシーズンです。
「ん?確率が高い? その期間ならいつでも見られるんじゃないの?」
と思いますよね。そう、そこが流氷のおもしろくも悩ましいところ。流氷は海に漂流する氷ゆえ、風により簡単に居場所を変えてしまいます。前日は申し分ない流氷が見られたのに、翌朝にははるか彼方に移動していたり、逆に夜になり海鳴りが消えたと思ったら翌朝は一面の氷の海ということもあると言います。
「どうしても流氷を見たくて来たのに、流氷がないっ!!(涙)」
そんな悲しい旅にならないように、事前にチェックしておきたいのが、流氷の位置を確かめることができるサイト。私も流氷旅に出る前からサイトとにらめっこをして過ごしていました。
 
★海氷情報センター(第一管区海上保安本部)
沿岸観測情報(出所:第一管区海上保安本部 海氷情報センター)
海氷速報(出所:第一管区海上保安本部 海氷情報センター)
 
★JAXA 地球観測研究センター オホーツク海の海氷分布
 
★気象庁 全般海氷情報
 
★流氷なび 網走・斜里(ウトロ)・羅臼の流氷情報
 
★流氷なう 紋別・雄武町の流氷情報
 
久しぶりに検索してみたら、今ではこんなに流氷の位置が確かめられるサイトが充実していました。絶対流氷を見たいなら、旅程に幅を持たせたうえで、これらのサイトを活用して「今」見られるところに移動するというフットワークの軽さも必要かもしれません。寒くても、流氷を求めて心は熱く! 流氷旅にはそんな情熱が必須のような気がします。
さて、これらの流氷を見るのにもっとも適しているのが砕氷船です。紋別では切手に描かれた「ガリンコ号Ⅱ」(2021年から「ガリンコ号III・IMERU(イメル)」も就航)、網走では「網走流氷観光砕氷船おーろら」が運航しており、流氷原を割り進むダイナミックなクルージングを楽しめます。
 
氷の海を割って進む、ガリンコ号Ⅱ(写真提供:紋別観光振興公社)
 
また流氷の海をスウェットスーツを着て泳いだり、SUP(ボードの上に立ってパドリングするスポーツ)を楽しんだり、海辺を乗馬したりと、さまざまなアクティビティを催行している会社もあるので、この時期、この場所ならではの流氷体験をしてみるのもオススメです。
流氷の最盛期を過ぎて氷の量が減っていき、沿岸に水路ができて砕氷船でない通常の船舶の航行が可能になった最初の日を「海明け」、そして肉眼で見える範囲の海面に流氷が確認できた最後の日を「流氷終日」と呼びます(※1)。これで流氷シーズンは終了です。
 
※1 今シーズンから網走地方気象台は「海明け」「流氷終日」の発表を行わないこととなりました。ニーズが少ないためとのことですが、なんだかちょっと残念です。
 

北海道のふるさと切手は動物率高め!

 
では、今回の一枚目の主役の切手を見ていきましょう。
発行は2004(平成16)年5月28日、題材は「流氷とガリンコ号Ⅱとオオワシ」で、原作者は北海道在住の洋画家の碓井正人氏。グラビア5色刷りで発行枚数は1,000枚、発売地域は北海道内の各郵便局とふるさと切手定例販売局でした。
 

ふるさと切手・北海道「流氷とガリンコ号Ⅱとオオワシ」
2004年発行

流氷が描かれているのに、なぜ初夏に発行なのかと思ったら「オホーツクDOいなか博」の開幕を記念して発行されていました。2004年5月1日から翌年3月まで開催されたこの「オホーツクDOいなか博」は、オホーツク圏の12市町村が地域復権を目指して一体となって取り組んだ「創造的街づくり事業」で、「大いなる田舎力の発揮」をテーマに自然景観や味覚などのすでに顕在化しているオホーツクの魅力に加えて、歴史・文化・人材などの潜在的な地域の魅力を掘り起こして、21世紀の新たな力とすることを目的としていました。なかなか当時の資料が手に入らなかったのですが、ピカピカの豪奢なパビリオンなどを建てるのではなく、既存のイベントや住民参加の体験ツアーなどを通して、地域の自然や日々の営みの中で自らに誇りを持ち、新しい価値基準を確立することに重きを置いた博覧会だったようです。コロナ禍で田舎暮らしが見直されている今なら、もっと注目されるのではないかなと思う、興味をそそられるイベントです。
 
切手は、オホーツク海のシンボルである流氷と砕氷船(ガリンコ号Ⅱ)、そして雄大に羽ばたくオオワシが描かれており、オホーツクの冬の旅の見どころが満載の図案です。前述しましたが、砕氷船にはこの紋別のガリンコ号と網走のおーろら号の2種があります。この両船、運航場所が違うだけではなく、氷を割る仕組みがまったく違います。
 
「ガリンコ号は、船体の前部にある「アルキメディアンスクリュー」というドリル状の装置により流氷を砕きながら前進していく船で、その迫力から、流氷を見に訪れる観光客の人気の的になっている。流氷のない季節も、オホーツク海の観光クルーズ船として、カレイの釣船として活躍しており、現在は2代目の「ガリンコ号2」が就航している。」(『郵趣ウィークリー』2004年4月23日号より)
 
その名の通り、巨大なドリルでガリガリと流氷を砕いてしまうなんて、迫力ありそうですね。しかもオフシーズンはカレイの釣船になるなんて驚きです。
一方の網走のおーろら号は、氷の上に乗りあげて船の重みで氷を割って進みます。私はこちらのおーろら号に乗船したことがあり、グググっと船首が上がった後に、ズズズーンと振動と音ともに落ちる感覚が何とも言えず「まるで南極観測船のよう!」と感動したのを覚えています。世界にある砕氷船の中で、唯一最初から観光のために作られた船だといい、見た目もスッキリとした大型船です。
 
春~秋は「知床観光船おーろら」として運航しています(写真提供:(一社)網走市観光協会)
 
いずれの船も展望デッキのほかに客席もあるので、寒がりの人は客室の中からも流氷を見ることができます。そしてひときわ歓声が上がるのが、大きな空や氷上にオオワシやオジロワシ、ゴマフアザラシが見えた時。冬鳥としてロシア東部から飛来するオオワシは、魚食のワシとしては最大種で、羽を広げた姿は1m前後にもなります。切手の図案のように飛翔する姿を見ることができたら、きっとかけがえのない旅の思い出になるでしょうね。
 
迫力あるオオワシ。流氷原を舞う姿は一層勇壮に見えます(写真提供:紋別観光振興公社)
 
次は2枚目の主役、1993(平成5)年5月17日発行の「ゴマフアザラシ」を見ていきましょう。原画は北海道在住のイラストレーター・野瀬敏明氏、グラビア5色刷で発行数は1300万枚でした。
 

ふるさと切手・北海道「ゴマフアザラシ」
1993年発行

「ゴマフアザラシは北半球でもっとも広く分布するアザラシで、北海道近海にほぼ周年生息しており、3~4月に氷の上で子どもを産む。子どもは純白の毛に包まれ、体長は約80センチ、体重は10キロほどだが、成獣では体長が約1.5~2メートル、体重は雄150キロ、雌120キロにも達し、毛色は灰色または濃灰色の地色に、胡麻を散らしたような小斑点が散在する。切手の図案は、流氷に乗るゴマフアザラシの親子を描くことにより、北海道の大自然と、北国に生息する動物たちの愛らしさを表現しているもの。」(『郵趣ウィークリー』1993年4月16日号)
 
 
このゴマフアザラシの親子の愛らしさが功を奏し、『郵趣』1994年1月号誌上で行われた「あなたが選ぶ ’93発行日本切手の人気投票」では、ふるさと切手部門では断トツの1位、また総合ランキングでも「皇太子御成婚小型シート」に次いで2位に食い込みました。
 
動物園では見慣れていても、流氷の上で見つけたら大興奮間違いなし!こんなキュートな
ゴマちゃんに会いたいですよね(写真提供:紋別観光振興公社)
 
実は、北海道のふるさと切手には動物が描かれることが多いのが特徴のひとつ。2007(平成19)年の郵政民営化前までに発行された42件90種のうち、30種以上の切手で18種の動物が描かれています。固有種や日本では北海道のみで見られる種が多いうえに、なんといっても美しかったり愛らしかったりと、文句なしに「映える」動物がたくさん。切手を眺めているだけでも癒されます。
 
<北海道のふるさと切手に描かれた動物>
・タンチョウ     ・キタキツネ
・ゴマフアザラシ   ・エゾシカ
・エゾシマリス    ・クリオネ
・エゾオコジョ    ・オオワシ
・エトピリカ     ・シマフクロウ
・エゾクロテン    ・ヒツジ
・エゾモモンガ    ・ラッコ
・エゾヒグマ     ・エゾリス
・エゾフクロウ    ・エゾユキウサギ
 

 

キュートなモフモフばかりを集めてみました。「これは欲しい!」と思わずコレクションしたくなる、かわいい切手のオンパレードですよね。流氷と共に描かれているのは、以下の3種です。
・ゴマフアザラシ
・クリオネ
・オオワシ
 
前述したように、「ゴマフアザラシ」は特に人気のある図案でした。発行から5年後の1998年の北海道新聞に、切手紹介の記事が載っていました。
 
「「ゴマフアザラシ」(一九九三年発行)の作者、野瀬敏明さんは郵政局から声を掛けられて考え込んだそうだ。「縦長の画面でという注文でしたから。アザラシは横長でしょ」。野瀬さんは札幌在住のイラストレーターで、三十年にわたり各種の広告、本の装丁、企業のカレンダーやワインのラベルなど幅広く手掛けている。五年前の仕事の記憶は今も鮮烈という。
「まず札幌市内の水族館に通って実物をスケッチしたり、館員から生態などを教わったりしました。流氷の上で出産することを知り、『氷上で憩う親子』という構想にたどり着くまで、二カ月くらいかかりましたね」
三点の素案を提出、うち一点がほかの作家のものにも競り勝って本格制作へ。切手の印刷面は縦三三ミリ、横二二・五ミリしかない。約五十倍の大きさで細密に、何度も書き直して原画を完成させ、細部に誤りがないか水族館でチェックも受けた。
「成獣だけだったら堅い感じになったでしょう。親子にしたため、ドラマのようなものも読み取っていただけるのでは。標本を書いたような図鑑っぽい印象は避けたかった」
いまのところ一度だけ手掛けたこの切手の人気に「一連の仕事のひとつにすぎません。でも好評なのはうれしいですね」と振り返る。
道外のふるさと切手のテーマには国立大学の時計台など変哲もないものが見受けられる。「ゴマフアザラシ」や「クリオネ」などといった顔ぶれをみると、北海道の自然の豊かさと画家のセンスの良さが好結果を生んでいることがうかがえる。
科学者関連の切手などの収集家としても知られる東京在住の科学ジャーナリスト、岡部昭彦さんは「ゴマフアザラシ」などを絶賛する。「動物が切手でいわゆる絵になるのは北海道ぐらいでしょう。出来栄えも国際的水準といっていいほどすばらしい」。デザインがいまいちだった日本の切手もふるさと切手の登場で多元的になり、競作の効果でレベルアップも感じられるそう。」(「北海道新聞」1998年4月22日付)
 

「ゴマフアザラシ」切手はその後、1999年6月25日に62円から80円に額面変更されて、キタキツネ(1992年5月29日発行)とともに再発行されています。さらに2007年9月3日には、今度はエゾクロテンと組み合わせた10枚新シートとして1000万枚、復刻発行されました。うるんだ黒い瞳とコロンとしたフォルムに小さなヒレのゴマフアザラシと流氷の組み合わせは、愛らしさと北海道らしさが共存していて、高い人気を誇ったのもうなずけます。当時私も愛用しており、いまだ手元に数枚残っています。
 

流氷に出会うことができるか? ドキドキしながら網走へ

 
私が流氷旅に出たのは、20年ほど前のこと。気が付けばそんなに時が経っていたのかと驚くほど、流氷の美しさは今も鮮明に記憶に残っています。
寒がりの私が真冬の北海道に旅立ったのは、ひとえに流氷が見たかったから。それゆえ、流氷が見られるまで延泊するつもりで、4泊5日のうち最初の2泊のみ宿をとり、あとはフリーという旅程を組みました。流氷が漂着してなかった日には、同じく長年興味を抱いていた網走監獄やオホーツク流氷館を訪ねられるように、目的地は網走に絞り、祈るような気持ちで網走駅に降り立ちました。当時はスマートフォンなどないので、その場でリアルタイムに流氷の位置サイトを確認できないため、自宅でチェックした情報を信じて、まずは網走川河口にある「流氷砕氷船おーらろ」乗船場に向かいます。

イメージしていたよりもずっと多くの流氷が押し寄せていて驚きました
 
じゃーん! 海上を埋め尽くす氷・氷・氷…。
やりました! 初日に目標達成です。祈りが通じ過ぎたのか、むしろ流氷は押し寄せすぎて、今日は港内から少し出たところまでしか運航できないとのこと。それでも見られないよりはマシです。早速おーろら号に乗船してクルージングにでました。
 
氷の下は何とも言えないブルー。流氷とともに多くの栄養分が運ばれ、
豊かな生態系を支えているといいます(写真提供:(一社)網走市観光協会)
 
大気は凍てつく寒さですが、碧い海に浮かぶ真っ白な流氷は美しく、展望デッキからずっと氷の海を眺め続けました。はるか上空にはオオワシかオジロワシか、猛禽類が舞っています。沖合にあまり出られなかったので、アザラシに出会うことはできませんでしたが、氷の上に降り立つカモメを見るだけでもいたく感動しました。

足は冷たくないのだろうか、と心配になるほど細い足の海鳥。
どんな生き物との出会いにも感動するスイッチが入ってしまいました
 
第一の目的を達成した私が翌日向かったのは、JR釧網本線の北浜駅。網走駅から、2016年に運行が終了した人気臨時列車「流氷ノロッコ号」に乗り、だるまストーブでスルメを炙りながら向かいます(※1)。北浜駅はオホーツク海に日本一近い駅といわれていて、駅から海岸までは20メートルほどしか離れていません。流氷を目の前で見ることができるため、特に冬場は多くの人が訪れるそうです。
 
運行当時はとても人気のあった列車。チケットを取るのが大変だった記憶があります
 
普段、スルメはほとんど食べないのですが、この時の炙りスルメは最高でした
 
本当はこんなイメージの流氷の海を見るつもりでした。
やっぱりリベンジしないとですね(写真提供:(一社)網走市観光協会)
 
真っ白な世界なので、写真が分かりにくいですが、氷が盛り上がって
山になっています。大きくなると高さ数mで1km以上にもなるそう
 
予想通り、こちらも流氷がいっぱい。というより、もはやあふれているような状況。これは風の強い年などに起こる現象で、海岸に漂着した流氷が押し上げられて山のようになる「流氷山脈」。海岸から間近に広大な流氷原を見たり、できれば冷たい海の水にも触れたりしてみたかったのですが、氷が邪魔で海水がまったく見えないというトホホなサプライズ。やっぱりちょっと、願をかけ過ぎたのでしょうか。。。
とにもかくにも遠方だけに、なかなか行くことができない北海道北東部。さらに流氷となれば、なかなかチャンスがないと思いますので、行くと決めたらぜひ万事備えて、絶対に見てほしいと思います。
 
さて、流氷待ちの際の訪問先として最適な「博物館 網走監獄」と「オホーツク流氷館」も訪ねましょう。
「博物館 網走監獄」は、1890(明治23)年に建てられた網走監獄の建造物を移築・復元した野外歴史博物館です。木造舎房では世界最古と言われており、国の重要文化財に指定されています。監獄といえど内部の装飾は美しく、建築観賞の側面も兼ね備えていますし、現在の網走刑務所の食事を再現した監獄食体験もできます。
「オホーツク流氷館」は流氷の神秘とオホーツクの絶景を体感できる施設。道内最大級のプロジェクションマッピングや、マイナス15℃の「流氷体感室」を備え、いつ訪ねても厳寒のオホーツク海と流氷を感じることができます。よく取り上げられるのが、「流氷体感室」で濡れたタオルを振り回し、棒状に凍る様子。私もやってみましたが、タオルがまるで剣のよう。貴重な経験でした。
 
貴重な建築と監獄の様子が見られる「博物館 網走監獄」(写真提供:(一社)網走市観光協会)

流氷のない時期でも、流氷体験できる「オホーツク流氷館」(写真提供:(一社)網走市観光協会)
 
ほかにもモロヨ貝塚館や北海道立北方民族博物館などがあり、どうして歴史好きなのに寄らなかったのか、今になって自分に問いただしたい思いでいっぱいです。北海道・北東北の縄文遺跡群の世界遺産登録や、民族共生象徴空間「ウポポイ」の設立と漫画『ゴールデンカムイ』の人気などを受けてアイヌ民族への関心も高まっていますので、ぜひこちらも足を運んでみてほしいです。
 
そして最後は海の幸。やはりその土地ならではの美味しいものを食べないと、旅は終われません。以前、北海道・札幌出身の友人が話していたのですが、同じ北海道でも道東の海の幸は桁違いに新鮮でおいしいのだそう。私はホタテの美味しさに魅了されましたが、ワカサギも美味しかったので次回は自分で釣って天婦羅にして食べるという体験もしてみたいですし、毛ガニやカラフトマスも気になります。
 
具だくさんの海鮮丼、美味でした~。お寿司もいただきましたが、どのネタも大振りで味が濃く、大満足!
 
網走湖名物の冬のワカサギ釣り、一度挑戦してみたいです(写真提供:(一社)網走市観光協会)
 
20年前はお金がなくて手が出なかった毛ガニ。再訪したら今度こそ!(写真提供:(一社)網走市観光協会)
 
こうして久しぶりに思い返してみたら、もう一度流氷が見たくなってきました。今度は紋別でガリンコ号に乗船してみようと思います。一方でグリーンシーズンのオホーツク海にも惹かれます。紋別のブランド魚「紋別カレイ」も食べたいですし、欲望が止まりません(笑)。昔に比べると格安航空会社(LCC)の路線が増えたので、いくぶん道東が近くなったかもしれません。早く自由に旅ができますようにと、新年最初から祈らずにはいられません。
 
※1 2017年からは「流氷物語号」として運航しています。
 

切手とマッチングが楽しめそうな風景印

 
今回は網走と紋別から、流氷の冷たさが伝わってきそうな風景印をご紹介しましょう。
まずは網走。網走郵便局と網走南四条郵便局の2局に郵頼しました。「博物館・網走監獄」正門と赤灯台、流氷、知床連峰が描かれた網走郵便局と、オホーツク流氷館や天都山標識、網走湾内の流氷、知床連峰が描かれた網走南四条郵便局、いずれも今回の切手旅にぴったりの図案です。
 
「博物館・網走監獄」正門と赤灯台、流氷、知床連峰が描かれた網走郵便局
 
オホーツク流氷館や天都山標識、網走湾内の流氷、知床連峰が描かれた網走南四条郵便局
 
網走にはほかにも、樺太アイヌのお守り“ニポポ”や毛ガニなど、楽しい意匠の風景印があるので、旅のついでの記念押印も盛り上がりそうです。
紋別からは、紋別郵便局と紋別大山局の2局へ郵頼しました。紋別郵便局は、流氷の海に立つオホーツクタワー、砕氷船・ガリンコ号Ⅱが描かれており、「流氷とガリンコ号Ⅱとオオワシ」の切手と見事にマッチ。この風景印が、切手発行の際には小型印として使われました。
ちなみに、1997年に図案改正しているのですが、以前のものだと、「ゴマフアザラシ」の切手にぴったりでした。
 
流氷の海に立つオホーツクタワー、砕氷船・ガリンコ号Ⅱが描かれた紋別郵便局の風景印

流氷に乗ったゴマフアザラシの親子と観光船ガリンコ号が描かれた、紋別郵便局の廃止印
 
もうひとつの紋別大山郵便局は毛ガニの変型印で、毛ガニの中にスカイタワー、オホーツクタワー、砕氷船ガリンコ号Ⅱが描かれています。いかにも毛ガニ、というトゲトゲした様子が表現されていて、北海道らしくて楽しい風景印です。
 
毛ガニの変形印の紋別大山郵便局の風景印
 
切手発行に際して、地元の郵趣家の方たちがなにか書き残したものが無いかなぁと思い、日本郵趣協会の支部報を検索していたら、JPS旭川の会報に「もうすぐ発売のふるさと切手「流氷とガリンコ号」記念押印をどうする?」という記事を見つけました。
 
「小型印のほかに風景印が結構あります。稚内・紋別・網走・根室等にありますが、実際に一日で押印するとなると、紋別と網走くらいのものではないでしょうか?
網走市では、網走局…網走南四条局…網走駅前局…網走北六条局 そして、紋別市では紋別局…紋別北浜局…紋別本町局…紋別大山局である。その中で一番は、紋別局の風景印で意匠は「流氷砕氷船・ガリンコ号Ⅱ」と、紋別大山局の変型風景印で、紋別局と同じく砕氷船・ガリンコ号である。そのほか難しいが、稚内潮見局と稚内南局…根室大正局などが考えられる。
いずれにしても、紋別局が適応局に指定されたので、そこの小型印とハト印、それに上記に書いた二局がどうしても必要である。1つ言わせて頂ければ、小型印の図案が切手そのものである。まぁ時間的な問題があるにせよ切手と同じ図案では新鮮味が薄れてしまう、これはよくあることではあるが。」(『JPS旭川』会報179号 2004年5月18日より)
 
今回郵頼した4局の名がすべて上がっていたので、偶然とはいえ驚きました。我ながらナイスチョイスでした。
紋別と網走は隣接しているイメージだったのですが、文中で「一日で押印するとなると、紋別と網走くらいのものでは」とあるので、調べてみたら100キロ以上離れていました。北海道ってやっぱり広いですね。たまにしか行けない北海道ですから、つい欲張ってしまいそうですが、計画的に無理しない局めぐりを心掛けないといけませんね。
 
流氷の彼方からの日の出。コロナが収束したら、こんな景色を見に行きましょうね(写真提供:紋別観光振興公社)
*****
 
寒い日が続いていますが、寒いならとことん寒い旅を、と今回は流氷をご紹介しました。ちなみに今日1月23日はどんな様子かというと、紋別以北は「流氷初日」を迎え、流氷シーズン本番が始まっています。一方、網走や知床はまだのよう。リアルタイムで北の海の様子が見られるので、旅行の予定がなくても、つい毎日チェックして疑似旅体験してしまいそうです。みなさんも是非サイトをチェックして、流氷ウオッチングを楽しんでみてくださいね。
それではまた来月!
 
※1 風景印とは消印の一種で、風景入り通信日付印の略称。大きさは直径36ミリ。郵便局のある地域の名所旧跡や特産品、ランドマークなどが描かれています。手紙やはがきを出すときに、郵便局員さんに「風景印でお願いします」といえば、風景印を押して配達してくれます。また、はがき料金(2021年現在は63円)以上の切手を貼ったはがきや封書、台紙を用意して「風景印の記念押印」をお願いすれば、風景印を押して手元に返してもらえます。これを再び投函・郵送することはできませんが、記念品として手元に残すことができるので、風景印を集めることを趣味としている郵趣家もたくさんいます。
※2 「郵頼」とは、文字通り郵便を使って風景印を頼む方法。どこに風景印を押印してほしいのかを記載した指示書とともに、63円以上の切手を貼った台紙(封筒でも官製はがきでもポストカードでも可)と返信用の封筒(宛先と84円切手を貼付)を添えて郵送します。指示書は端的に、明確な文章を心掛けましょう。「〇〇郵便局 風景印押印 ご担当者様」宛で、どこに、どう風景印を押印してほしいのかを図示し、日付の指定があれば明記します。どうして貴局の風景印が欲しいのか、などの細かな理由を長々と記載する必要はありません。「郵頼」の対応は、郵便局員さんが業務の合間に善意でやってくれることなので、わかりやすい指示書が好まれます。
 
【参考文献】
・『郵趣』1993年5月号 日本郵趣協会発行
・『郵趣』1994年1月号 日本郵趣協会発行
・『郵趣』1994年3月号 日本郵趣協会発行
・『郵趣』2004年6月号 日本郵趣協会発行
・『郵趣ウィークリー』1993年4月16日 日本郵趣協会発行
・『郵趣ウィークリー』1996年1月12日 日本郵趣協会発行
・『郵趣ウィークリー』1999年5月28日 日本郵趣協会発行
・『郵趣ウィークリー』2004年4月23日 日本郵趣協会発行
・『郵趣ウィークリー』2007年9月14日 日本郵趣協会発行
・「ふるさと切手の中の北海道<下>」北海道新聞札幌版 1998年4月22日
・「もうすぐ発売のふるさと切手「流氷とガリンコ号」記念押印をどうする?」『JPS旭川』会報179号 2004年5月18日
・『ビジュアル日本切手カタログ Vol.2ふるさと・公園・沖縄切手編』 日本郵趣協会発行 2013年10月
・『テーマ別日本切手カタログ Vol.5動物編』 日本郵趣協会発行 2019年7月
・『さくら日本切手カタログ2022年版』日本郵趣協会発行 2021年4月
・『風景印大百科 1931-2017 西日本編』日本郵趣出版発行 2017年5月
・『もの知り切手用語集』改訂版第9刷 日本郵趣協会発行 2019年1月
・「おいしいまち網走 旅レシピ」網走市役所
・「網走市内案内図」網走市役所 2021年10月改訂
・「学びにおいでよ あばしり 網走教育旅行ガイド」網走市観光協会
・「網走・オホーツク ぐるめ街マップ2022」網走ぐるめ街活性化協議会 2021年
 
【参考ホームページ】
網走市観光協会 https://www.abakanko.jp/
網走流氷観光砕氷船おーろら公式ホームページ https://www.ms-aurora.com/abashiri/
紋別観光振興公社観光事業課 https://tic.mombetsu.net/
オホーツク・ガリンコタワー株式会社 https://o-tower.co.jp/
 
【写真提供】
網走市観光協会
紋別観光振興公社
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