切手と遊ぶ発見ミュージアム

切手旅第18回「富山のホタルイカ」

切手旅第18回の舞台は、富山県の滑川(なめりかわ)市です。
ご紹介する切手は、1966(昭和41)年発行の普通切手「ホタルイカ」です。
 

普通切手・新動植物国宝図案切手「ホタルイカ」(1966年発行)

 
ホタルイカの産地・滑川ってどんなところ?

春の味覚のホタルイカ、皆さんはお好きですか? 私はスーパーにホタルイカが出回りだすと、ホタルイカと菜の花のパスタに白ワイン、酢味噌和えで日本酒、天婦羅にビール等々、ホタルイカ&お酒のマリアージュを求めて、ついお料理サイトやグルメサイトを検索してしまいます。食いしん坊のお酒飲みにとって、ホタルイカならではのワタのほろ苦さとプリッとした身の食感は、春の楽しみのひとつです。
 
このホタルイカの産地といえば、富山湾がまっさきに挙げられます。普段は日本海沖の水深200~300mの深海に生息しているホタルイカが、3〜5月になると海岸近くに浮上して産卵します。この際に、体内に約1000個もあるという発光器が青く美しい光を放つことからホタルイカと呼ばれ、富山市水橋から滑川市、魚津市にかけての海面は「ホタルイカ群遊海面」として国の特別天然記念物に指定されています。特に滑川市一帯の海面には多く集まることから「ほたるいかミュージアム」もあり、ホタルイカ観光の本拠地となっています。
 
ホタルイカが全身発光する様子。神秘的なブルーが印象的です(写真提供:ほたるいかミュージアム)
 
滑川市は富山県中央部からやや東北寄りの海沿いに位置し、中心部の中川河口一帯は北陸街道の宿場町として栄えました。大規模な商家の建物や江戸末期の町家建築などが国登録有形文化財に指定されており、今もあちこちに残されています。そんな歴史的建造物は映画の舞台にも使われていて、ロケ地としても人気があるそう。
 
そしてもうひとつの滑川名物、それは富山湾の海洋深層水。富山湾はすりばち状の地形で、最深部は1000m以上の日本でも有数の深い湾です。海洋深層水は、水深200m以深の日本海固有冷水塊とよばれる水域から取水するもので、
①年間を通じて2℃程度の低温で安定していること
②窒素やリンなど栄養塩が豊富でミネラルバランスが良いこと
③有機物や細菌類が少なく、非常にクリーンであること
を理由に、飲料水や医薬品など様々な用途に用いられています。高知県室戸や静岡県焼津など日本各地に取水施設がありますが、沿岸の取水施設から水深200m以深の取水域まで、距離が近いほうが取水管が短くて済み、建築コストが安く済みます。富山湾のすぐ深くなる地形は取水にうってつけで、県内に3カ所、うち2ヵ所の取水施設が滑川市内にあるのです。
トヤマエビなどの増養殖や、日本酒の仕込水にも用いられる海洋深層水は、食いしん坊のお酒飲みにも決して無関係ではない、ありがたい水資源です。
 
水深333mから取水した海洋深層水を気軽に試せる「滑川海洋深層水分水施設アクアポケット」。
6種の海洋深層水を販売するほか、解説展示や体験コーナーも備えています(写真提供:ほたるいかミュージアム)

普通切手とふるさと切手、2種の「ほたるいか」切手


では、切手の中のホタルイカを見ていきましょう。
1966年2月2日、郵便料金値上げ案が国会に提出され、衆参両議院を通過して原案可決、成立しました。それにともない郵政省は新料金体系にあわせた切手を発行することになりました。このシリーズ、「NIPPON」の文字が印面に入れられた最初の普通切手シリーズとしても知られています。

「万国郵便連合(UPU)の新規則により、加盟各国は1966年(昭和41)1月1日以降発行の切手から、切手印面に国名をローマ字で入れることになった。日本では〈NIPPON〉を表記することとなり、記念・特殊切手では同日以降発行のすべての切手に〈NIPPON〉の表示が入れられた。
しかし、普通切手では1966年度中に郵便料金の改正が予定されていたため、その料金に合わせた新しい切手の発行から実施された。その後、1992年(平成4)11月に発行された「平成切手」シリーズの前までに発行された普通切手を「新動植物国宝図案切手」と呼ぶ。」
『ビジュアル日本切手カタログVol.4 普通切手編』
 
この切手旅で普通切手をご紹介するのは初めてなのですが、普通切手は郵便料金の値上げや国際的な取り決めに基づく図案改正などのタイミングで新発行されます。最近では2019年にはがき料金が62円から63円に、封書料金が82円から84円に改訂され、新しい額面の普通切手が発行されたことは、記憶に新しいですよね。
郵趣の世界では切手を料金改定ごとにグループ化してわかりやすく分類しています。「ホタルイカ」の切手を含む14額面の新切手は、新動植物国宝図案切手シリーズの中でも「1966年シリーズ」と呼ばれています。

普通切手・新動植物国宝図案1966年シリーズの「ホタルイカ」

「(新動植物国宝図案切手)シリーズでは、期間内に封書基本料金が5回改正されており、その都度それに対応した切手が発行されたため、シリーズを封書基本料金別に再分類し、当該改正用切手が最初に発行された年の名前を冠したシリーズ名で表示している。ただし、1966年(昭和41)7月から1972年(昭和47)までの封書基本料金15円時期は、郵便の自動化を目的として、1967年から色検知に対応した切手が発行されたため、色検知の導入前後でシリーズを2つに分けている。
 このため、このシリーズは以下のような6つのグループで分類している。
 Ⅰ.1966年シリーズ(封書15円時期初期)
 Ⅱ.1967年シリーズ(封書15円時期・色検知導入後)
 Ⅲ.1972年シリーズ(封書20円時期)
 Ⅳ.1976年シリーズ(封書50円時期)
 Ⅴ.1980年シリーズ(封書60円時期)
 Ⅵ.1989年シリーズ(封書62円時期)」(前掲同)
 
こんなに頻繁に郵便料金が引き上げられていたんですね。ここに至るまでも、1871年に日本で最初に発行された手彫切手(竜、桜、鳥)にはじまり、小判切手、菊切手、旧高額切手、田沢型切手、富士鹿切手、風景切手、新高額切手、震災切手、昭和切手、新昭和切手、産業図案切手・昭和すかしなし切手、動植物国宝図案切手があり、新動植物国宝図案切手をはさんで、平成切手と分類されています。切手を見ただけで細分化されたシリーズまでわかるようになったら学芸員として一人前というなら、私はまだまだ道のりが長そうです…。
 
さて、肝心の「ホタルイカ」切手を含む1966年シリーズは、まず1966年6月20日に60円延暦寺根本中堂、200円東大寺金銅八角灯籠火袋の音声菩薩の2種、7月1日に7円キンギョ、15円キク、25円アジサイ、35円ホタルイカ、65円はにわ〈馬〉の5種、その後9月1日に75円オオムラサキ、12月5日に110円桂離宮、12月20日に90円風神、120円迦陵頻伽の2種、12月26日に50円弥勒菩薩像、1967年5月1日に20円フジ、5月15日に45円ミズバショウと、五月雨式に14種が発行されました。1966年の『郵趣』7月号に、前半7種の額面、図案、寸法、版式、刷色、発行日、原画作者、初日印指定局(※1)、用途が一覧になった表が載っていました。
 

1966年発行の『郵趣』7月号掲載の一覧表

これによれば、「ホタルイカ」はグラビアの青・茶・灰の3色刷り、原画作者は郵政省技官(※2)の長谷部日出夫氏、第1種定形外用の切手として発行されたことがわかります。ところが実はこのホタルイカ切手、もっと前に発行される予定があったようです。
 
「昭和三十四年の初夏、大蔵省印刷局でホタルイカを描いた通常切手の試刷りがくり返されていた。長谷部日出男氏が描いたもので、刷色は黄、赤、青、緑の四色グラビア、額面は四円であった。長谷部氏は標本などをみて描いたのでホタルイカの実感が出ていなかったようだ。それで翌三十五年のほたるいか観光シーズンに現地取材することになった。富山県滑川(ナメリカワ)・魚津の沖合い文部省文化財保護委員会によりホタルイカの群遊海面として特別天然記念物に指定されている。長谷部氏は印刷局の島田武夫技官、五味金沢郵政局長、篠川同管理課長らとともに同年五月十一日午後五時に滑川入りした。同夜観光船に乗って滑川沖でホタルイカを取材、発光色などを確かめたのである。この切手は翌三十六年春に発行されるはずだった。
それがいつのまにか立消えになってしまったのだが、新郵便料金とローマ文字入りのため改正される通常切手の三十五円として今回いよいよ陽の目をみることになったのである。」『京都寸葉』第821号
 
 
この記事を読み、もしやと思いページを繰ってみたのが、原画作者の長谷部氏と同時代の郵政省技官である木村勝氏の原画が紹介されている『切手画家 木村勝の遺した資料』。切手旅でもいくどか利用している資料ですが、やはりありました。原画作者は不明(−)としたホタルイカの原画です。作者不明とされていますが、おそらく長谷部氏なのでしょう。
 
『切手画家 木村勝の遺した資料』掲載のホタルイカ原画(上段右と、下段3種)
 
切手原画はもとより、試し刷りの段階まで来ていても発行が立ち消えることがあるんですね。何パターンも用意して会議にのぞむ技官のご苦労を思うと、切ない気持ちになります。
ところで当時の郵趣雑誌には、切手にまつわる話ばかりでなく、描かれた対象に関する解説がしっかり載っているのもおもしろいところ。ホタルイカについても、
 
「頭足類軟体動物、本州、北海道、朝鮮南部の近海に分布し、富山の滑川、魚津両市附近の富山湾は群遊海面として有名である。形はスルメイカに似て長さ四〜六センチ、足は五対(十本)で全身に七百三十個以上の発光器があり、とくに四番目の足にある発光器はもっとも明るく十五センチ離れたところで三号活字が読めるという。
(中略)
ホタルイカは滑川市誌によると、天正十三年(一五八五)に滑川漁業の祖といわれる四歩一屋(しぶいちや)四郎兵衛が光るイカを捕まえたのがこの地方で存在が知られた初まりとされている。つづいて天禄十四年(一七〇一)には加賀藩主が滑川の本陣でホタルイカにネギを添えて食べたという記録が残っている。そのご「マツイカ」「コイカ」などと呼ばれてきたが、「ホタルイカ」と名づけたのは東京帝国大学理科大学(現在の東大理学部)の渡瀬庄三郎教授である。渡瀬氏は明治三十八年五月二十八日夜(前日から日本海海戦がはじまった)滑川沖に漁船で漕ぎ出して光るイカを発見したのだ。渡瀬氏がボストンで開かれた世界動物学会でも発表して以来一躍世に知られ、滑川も一時はホタルイカブームになったことさえある。現在では同湾内の新湊や氷見の沖合いにも群遊範囲が拡がっているが、漁獲高の方は非常に減少してしまった。ここで錯覚を起しやすいのは特別天然記念物に指定されているのに漁獲が許されるかということであるが、指定を受けているのはホタルイカの群遊海面であってホタルイカそのものでないのである。」
『京都寸葉』第821号
 
と、生態から発見に至るまでの経緯などが書かれています。また、『月刊ゆうびん』昭和41年8月号でも、元新潟水産試験所勤務の藤野一郎氏がホタルイカについて詳細な解説を載せています。前回も触れましたが、郵趣家は切手を通して様々な文物について学ぶチャンスに恵まれていますね。
 
泳ぐホタルイカ。生きている姿を目にする機会は少ないですが、目が大きくてカワイイです
(写真提供:ほたるいかミュージアム)
 
「たいていのことは切手から学んだ」なんて、以前主任学芸員が言っていましたが、あながち嘘ではないのかもしれません。
ところでホタルイカは、1999年発行のふるさと切手でも再び起用されています。
 

ふるさと切手「ほたるいか」(1999年発行)

今度は横構図で1999年4月26日発行、グラビア5色、原画は石田俊良氏です。石田氏は日本画家ですが、富山・護国寺の第5世名誉住職でもあったとのことで、その原画は普通切手に比べるとより幻想的な雰囲気が出ているとともに、ホタルイカへ慈しみの想いがあふれているような気がします。

この1999年4月26日に発行されたふるさと切手から、定例発売局と定例初日印使用局が大幅に拡大されました。当初は企画した郵政局管内と、東京中央局のみの販売でしたが、次第に取扱局が増え、今回からは全国のすべての中央局でふるさと切手が販売される事になりました。どこでも買えるようになったのは嬉しい反面、その土地を旅して、旅先から送る小さなプレゼント代わりの切手、という楽しみは減ってしまったように思い、少し残念です。皆さんにとってのふるさと切手はどんな存在でしょうか?
 
※1 切手の発行日にその日1日だけ、初日押印のために使われる消印を初日印と言います。どこの郵便局でも初日印を押印してもらえるわけではなく、全国主要郵便局と切手の図案にゆかりのある地の郵便局などが初日印指定局となります。
※2 現・日本郵便株式会社の切手デザイナーのこと。かつては技芸官、技官と呼ばれていました。
 

いつ訪ねても十分楽しい「ほたるいかミュージアム」
でも、生きたホタルイカに出会うならこれからがオンシーズン! 

 
昨年秋、ホタルイカのふるさとである富山県滑川市を訪ねてきました。
富山駅から「あいの風とやま鉄道」で約15分、滑川駅に到着です。駅舎には「ホタルイカと海洋深層水のまち」と掲げられています。
 
JR滑川駅にある「ほたるいかと深層水のまち 滑川」の看板
 
駅からはホタルイカの群遊海面を模したと思われるカラー舗装が施され、富山湾と「ほたるいかミュージアム」へと誘います。時折、コミカルな表情のホタルイカのタイルが貼られていて微笑ましいですし、振り向けば駅舎の後ろに雪をかぶった立山連峰が顔をのぞかせており、ミュージアムまでの10分足らずの道のりは、久しぶりに旅に出た高揚感も相まって、あっという間でした。

「ほたるいかミュージアム」までの道しるべのカラータイル。ちゃんと発光している様子が描かれています
 
突き当たりはもう富山湾。「ほたるいか群遊海面 国指定特別天然記念物 滑川を中心として沖合一.二六〇M」と描かれたモニュメントが建てられており、群遊海面を臨むことができます。一帯は「はまなす公園」と名付けられ、滑川に縁のある俳人が詠んだ、ホタルイカの句碑が8つも建てられています。ホタルイカが漆黒の海を青緑に染める様子は富山湾の神秘と呼ばれていますが、俳人の創作意欲も間違いなくかき立てる幻想的な光景なのでしょう。
ここから海沿いに100mほど東に進めば、「道の駅ウェーブパークなめりかわ」の一角にある「ほたるいかミュージアム」が見えてきます。
 
「ホタルイカ」ではなく、「群遊する海面」が天然記念物に指定されていると
今回初めて知りました。ちょっと驚きですよね

一句一句読んでは、その光景を思い浮かべてみます。ますます「見てみたい!」という気持ちが高まります

「ほたるいかミュージアム」全景。一帯は「道の駅ウェーブパークなめりかわ」として整備され、
レストランやショップ、入浴施設もあり、1日楽しめます(写真提供:ほたるいかミュージアム)

受付に向かうと…、
「お客様、せっかくお越しいただきましたが、今の時期、ホタルイカはいないんですよ。本物が見られませんけれど、それでもご入場されますか? よろしいですか? 大丈夫ですか?」
とお声がけいただきました。そう、ほたるいかミュージアムとは言いますが、ホタルイカは漁期である3月から5月の間しか生体展示していないのです。私は事前に調べた上で、「本物が見られなくてもホタルイカについて学べるなら行きたい!」と思って訪ねたので、逆にびっくり! そんな申し訳なさそうにおっしゃるなんて、同じ博物館関係者として少し気の毒になってしまいました。

ですのではっきり大きく書いておきますね。
 
「生きたホタルイカを見たいなら、3月から5月に訪ねるべし!」
 
さて、中に入ると、ホタルイカの生態や発光の仕組み、標本などのほか、ホタルイカが生息する深海の生き物たちや世界のイカについての展示、そして滑川沖水深333mから取水された海洋深層水のタッチプール「深海不思議の泉」があり、その冷たさと低温で生きる生物に触れることができます。
 
知っているようで、知らないホタルイカの不思議を図や写真で学べます

漁期には、その朝捕れたホタルイカを展示します。そのタイムスケジュールを紹介!

タッチプール「深海不思議の泉」で、実際にホタルイカに触れてみることも。
漁期以外はトヤマエビなどに触れられます(写真提供:ほたるいかミュージアム)

手の中で光ってます! こんな貴重な体験、してみたいです!(写真提供:ほたるいかミュージアム)

さらには3月から5月の間はホタルイカ、それ以外の季節は龍宮ホタル(発光性プランクトン)の発光ショーが見られるライブシアターもあり、盛りだくさんの展示内容です。私が訪ねたのは11月ですからホタルイカの神秘的な青緑色は見られませんでしたが、それでも龍宮ホタルの放つわずかな光に目を凝らし、生き物の不思議を実感。最後にはLEDライトでホタルイカの発光の再現もあり、その明るさに驚きました。
 
朝捕れの元気なホタルイカを見ることができるライブシアター(3~5月)(写真提供:ほたるいかミュージアム)
 
深海コーナーではダイオウグソクムシなどが展示された水族コーナーもありますし、パネル展示ではホタルイカと滑川の歴史について学ぶこともできます。興味をひかれたのは「ホタルイカの身投げ」のコーナー。ちょっと物騒なタイトルですが、産卵のために海岸近くまで来た、あるいは産卵を終えて力尽きたホタルイカが波によって浜辺に打ち上げられた様子を言います。海岸に身を投げた、という意味のようです。
 
キモカワイイと人気の謎の深海生物・ダイオウグソクムシもじっくり観察できます

道の駅全体と、ホタルイカが集まる群遊海面、そして漁と観光船の様子を再現したジオラマ

「ホタルイカの身投げ」。悲しくも美しい光景です(写真提供:ほたるいかミュージアム)

波打ち際に沿って青い光が遠くまで続く様子は、星屑が打ち上げられたようで、とっても神秘的。ぜひ見てみたい! と思いますが、新月で南風が吹き、川が濁っていない日、といったいくつかの条件が揃わないと見られない現象だそうです。そして、身投げの起こる日は海岸近くにホタルイカが集まってきていることから、地元の人たちは、打ち上げられる前に網で水面をさらって捕獲する「ホタルイカすくい」に興じるのだとか。いずれもこの時期だけの風物詩。タイミングが合えば、ぜひ見てみたい光景です。
 
また、郵政省技官の長谷部氏が取材したように、船に乗ってホタルイカを見に行くこともできます。「ほたるいか海上観光」といい、早朝に滑川港を観光船に乗って出発し、漁船が実際に漁を行うところを、脇に船をつけて間近に見るというもの。チケットがすぐ完売になるほど人気があるそうなので、旅程が決まったらなるべく早く予約しましょう。
 

早起き必須ですが、せっかく春に滑川を訪ねるなら、絶対乗船したい「ほたるいか海上観光」
(写真提供:ほたるいかミュージアム)

さて、最後は旅のお楽しみ、いよいよホタルイカを味わいます。富山県産のホタルイカの最大の特徴はその大きさ。兵庫県などほかの産地のものに比べると格段に大きく、つぶが揃っています。これは産卵期のメスしか捕獲していないから。ホタルイカはメスの方が大きいのですが、富山湾では産卵が終わり海に戻るところを定置網で捕まえています。ほかの地域では地引網で根こそぎ捕獲するので、オスやまだ育ち切っていないメスも交じるため、大きさが不揃いになるのだそう。産卵後なので個体数が減ることなく、大きくて美味しいホタルイカが味わえるんです。
「ほたるいかミュージアム」の2階には「パノラマレストラン光彩」があり、富山湾を望みながら富山湾の恵みを満喫することができます。もちろんホタルイカを使ったメニューも豊富にあり、どれにしようか迷うほど。こちらでは特殊な冷凍技術により、一年中ホタルイカが味わえ、和食も洋食もあるので、グループでいろいろ頼むと楽しそうですね。
 
迷いに迷って、ホタルイカの天丼に。これこれ、この味!と思わず唸ってしまいました

ホタルイカのしゃぶしゃぶ。プルプルの身とワタの味わいに、お酒が欲しくなりました

洋食にもトライ。ニンニクやオリーブオイルとも良く合います

一方、「ほたるいかミュージアム」に隣接してお土産売場とカフェもあります。レストランでホタルイカを満喫した後だったので、挑戦することができなかったのですが、こちらでは手軽な「ほたるいかバーガー」や「ほたるいかフライ」など、カジュアルにホタルイカを味わうことができます。どうしてもホタルイカというと決まったレシピしか思い浮かばないので、本場の調理方法は刺激になります。お土産も定番の沖漬けをはじめ、素干しなどの加工品が充実。海洋深層水や入浴剤、地酒などなど、お財布の紐が緩みっぱなしです。
 
沖漬けのほかに、桜干しと素干しも購入。乾物は旨味が凝縮されてますし、持ち帰りも楽でおススメです

海洋深層水は重くても、深層水のお塩なら手軽に持ち帰れますね(写真提供:ほたるいかミュージアム)

近年は道の駅の魅力度が増して、旅の目的地とする人も多いと聞きます。「道の駅ウェーブパークなめりかわ」も、滑川の楽しみがぎゅぎゅっと詰まっていました。生きたホタルイカがいない時期でも十分に楽しめますが、チャンスがあれば、春旅をおススメします。
 

風景印のお土産も忘れずに!

 
ホタルイカ、ほたるいかミュージアム、剣岳、ハナショウブの風景印
 
今回は滑川郵便局から郵頼(※)で風景印をいただきました。ホタルイカが全面に押し出された変形印です。ポッと足の先が光っている様子まで描かれていて、どことなくキュート。私はこの風景印がとても気に入りましたが、主任学芸員は初代の風景印がお好みだそう。
 

1993年図案改正の2代目 ホタルイカ漁、ハナショウブ、立山連峰

1950年新規使用の初代 名産・ホタルイカ、漁網、立山連峰、天然記念物・蜃気楼
 
調べてみると今までに2回、図案改正していました。ひとつ前の2代目の風景印は漁の雰囲気がでていますし、初代の風景印はホタルイカと共に富山湾名物の蜃気楼が描かれています。3代目の風景印は1999年のふるさと切手発行の際に図案改正されたもので、初日印の1種として使われました。切手と一緒に並べると、雰囲気がすごくあっています。風景印と切手はマッチング(風景印の図案にあった切手をあわせること)してこそ、という愛好家の気持ちがすこし分かった気がしました。まだマッチングには挑戦したことがないので、そろそろこの切手旅で一歩を踏み出してみたいと思います。ご期待ください!
 
※ 風景印とは消印の一種で、風景入り通信日付印の略称。大きさは直径36ミリ。郵便局のある地域の名所旧跡や特産品、ランドマークなどが描かれています。手紙やはがきを出すときに、郵便局員さんに「風景印でお願いします」といえば、風景印を押して配達してくれます。また、はがき料金(2022年現在は63円)以上の切手を貼ったはがきや封書、台紙を用意して「風景印の記念押印」をお願いすれば、風景印を押して手元に返してもらえます。これを再び投函・郵送することはできませんが、記念品として手元に残すことができるので、風景印を集めることを趣味としている郵趣家もたくさんいます。
 
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今回は行ってきたばかりの富山・ホタルイカの旅をお届けしました。旅に出づらい状況が続いていますが、切手片手の旅はいろいろなものに出会わせてくれます。今シーズン、ホタルイカに会いに行けるかどうかは難しいかもしれませんが、いつかはあの神秘の輝きに出会いに、春の滑川を再訪したいと思います。また、現地に行けなくてもスーパーで富山県産のホタルイカに出会うことがあるかもしれません。大きくて食べ応えのあるホタルイカを味わいながら、富山の春を感じてみてくださいね。次回もお楽しみに。
 
【参考文献】
・『郵趣』1966年7月号 日本郵趣協会発行
・『郵趣』1999年5月号 日本郵趣協会発行
・『京都寸葉』第821号 京都寸葉会発行 1966年6月11日
・『ゆうびん』1966年6月号 切手文化部発行
・『ゆうびん』1966年8月号 切手文化部発行
・『切手』2404号 郵便文化振興協会発行 1999年3月20日
・『郵趣ウィークリー』1999年3月19日 日本郵趣協会発行 
・『切手画家 木村勝の遺した資料―戦後切手1962~1984-』 日本郵趣協会発行 2014年10月
・『ビジュアル日本切手カタログ Vol.4 普通切手編』 日本郵趣協会発行 2015年10月
・『テーマ別日本切手カタログ Vol.5 動物編』 日本郵趣協会発行 2019年7月
・『さくら日本切手カタログ2022年版』日本郵趣協会発行 2021年4月
・「なめりかわ ほたるいかミュージアム」パンフレット
・「なめりかわ 宿場回廊めぐり」ガイドマップ 滑川市観光協会
・「女子旅in滑川」富山県滑川市 
・「2021ぐるっとなめりかわ滑川」パンフレット 滑川市観光協会 2020年
 
【参考ホームページ】
「ほたるいかミュージアム」 https://hotaruikamuseum.com/museum
「滑川市ホームページ」 https://www.city.namerikawa.toyama.jp/
「滑川市観光協会」 https://namerikawa-kanko.jp/
 
【写真協力】
ほたるいかミュージアム
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